漁獲可能量(TAC)とは? – 持続可能な漁業のために
地球環境を知りたい
先生、『漁獲可能量』ってなんですか? なんで魚を獲る量を決める必要があるんですか?
地球環境研究家
いい質問だね! 実は、魚を獲りすぎると、魚の数が減ってしまって、将来的には魚が全く獲れなくなってしまう可能性があるんだ。 そうならないように、魚の種類ごとに、毎年どれくらいまでなら獲っても良いかという上限を決めているんだ。 これが『漁獲可能量』、英語ではTotal Allowable Catchといって、頭文字をとってTACって呼ばれているんだよ。
地球環境を知りたい
なるほど!魚が減らないようにするためなんですね。 でも、全部の魚に決まっているんですか?
地球環境研究家
いいところに気がついたね! 実は、漁獲量が多かったり、資源の状況が悪化している魚など、限られた魚種だけに適用されているんだ。 日本では、サンマ、スケトウダラ、マイワシなど7魚種が対象になっているよ。
漁獲可能量とは。
地球環境とエネルギー問題において重要な役割を果たす「漁獲可能量」は、将来にわたって水産資源を安定的に利用できるように、魚の種類ごとに年間の最大漁獲量を定めて、資源の適切な管理を目指す制度です。
日本では、1996年に批准した国連海洋法条約に基づき、同年制定された海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(TAC法)で、漁獲可能量(TAC)の定義が定められています。TAC法第2条では、TACを「日本の排他的経済水域などで漁獲できる水産資源の種類ごとに、一年間に漁獲してよい最大量」と定義しています。
漁獲可能量の対象となる魚種は、以下の3つの条件のうちいずれかに該当し、さらに漁獲可能量を設定するための科学的なデータが十分に蓄積されているものに限られます。
1. 漁獲量が非常に多く、国民の食生活に欠かせない魚種
2. 資源の減少が深刻で、早急な資源管理が必要な魚種
3. 日本の周辺海域で外国漁船も操業している魚種
現在、これらの条件を満たす魚種として、サンマ、スケトウダラ、マアジ、マイワシ、マサバ・ゴマサバ、スルメイカ、ズワイガニの7魚種が漁獲可能量の対象となっています。
日本の食卓と漁獲可能量(TAC)の関係
私たちが日々口にする魚介類。その多くは、日本の近海で漁獲されています。しかし、美味しい魚を将来にわたって食べ続けるためには、魚の数を減らし過ぎないようにする必要があります。そこで重要な役割を担うのが「漁獲可能量(TAC)」です。
TACとは、特定の種類の魚について、1年間で漁獲して良い最大量を決める制度です。魚の種類ごとに、その資源量や環境の変化などを考慮して、漁獲枠を定めます。この漁獲枠を守ることで、魚の乱獲を防ぎ、将来にわたって安定的に魚を漁獲できるようにしています。
つまり、日本の食卓は、漁獲可能量(TAC)によって支えられていると言えるでしょう。私たちが毎日おいしい魚を食べられるのは、このTAC制度のおかげなのです。
資源管理の重要性 – なぜ漁獲量を制限するのか?
豊かな海がもたらす恵み、水産物は私たちの食卓に欠かせない存在です。しかし、美味しい魚介類を将来にわたって食べ続けるためには、水産資源を適切に管理し、乱獲を防ぐ必要があります。
海の中には、それぞれの種ごとに適切な生息数というものがあります。もし、魚の数が減り続ければ、生態系のバランスが崩れ、他の生物にも影響が及んでしまいます。さらに、魚の数が減ることで漁獲量が減少し、漁業者の生活にも大きな影響を与えかねません。
そこで重要となるのが漁獲量の制限です。漁獲量を制限することで、魚の数を適切な範囲に保ち、持続可能な漁業を実現することができます。漁獲可能量(TAC)は、こうした資源管理の考え方に基づいて設定される重要な指標なのです。
漁獲可能量(TAC)はどうやって決まる?
漁獲可能量(TAC)は、それぞれの魚種ごとに、その年の安全な漁獲量の上限を国が決定する制度です。しかし、一体どのようにしてこの数字が決まっているのでしょうか?
まず初めに、水産庁の研究所などが、魚の資源量や繁殖能力などを調査します。この調査には、漁業者の協力も不可欠です。
次に、この調査結果に基づいて、漁業者が加入する漁業協同組合(漁協)や専門家、行政機関などが話し合い、漁獲可能量を決定します。
この際、資源の減少を防ぎ、将来にわたって安定的に漁業を続けるために、漁獲可能量は、魚の資源量が減少しない範囲で設定されることが重要です。
このように、漁獲可能量の決定は、科学的なデータに基づいて、漁業者、専門家、行政機関が協力して行っているのです。
漁獲可能量(TAC)制度の課題と未来
漁獲可能量(TAC)制度は、資源の持続可能な利用という重要な目標を掲げていますが、その道のりは平坦ではありません。
まず、正確な資源量の予測は容易ではありません。海洋環境は常に変化し、魚類の生態は複雑です。そのため、予測が外れ、漁獲制限が厳しすぎたり、逆に緩すぎたりすることがあります。漁業者の生活を守るためには、より精度の高い予測と、予測が外れた場合の柔軟な対応が求められます。
また、TAC制度は、違法漁業や漁獲量の過少報告といった問題にも直面しています。これらの行為は、資源管理の efforts を台無しにし、持続可能な漁業を脅かします。厳格な監視と取締り、そして透明性の高い漁獲情報の管理システムの構築が不可欠です。
さらに、漁業者間の協力も大きな課題です。TAC制度は、限られた資源を漁業者間で分配する仕組みであるため、漁業者同士の競争を生み出す可能性があります。資源管理の重要性に対する共通認識を持ち、協力体制を築くことが、持続可能な漁業の実現には欠かせません。
これらの課題を克服し、漁獲可能量(TAC)制度をより効果的に機能させるためには、科学的な知見の充実、最新の技術の導入、そして関係者間の連携強化が不可欠です。未来の世代に豊かな海を引き継ぐために、私たちはより良い漁業のあり方を模索し続けなければなりません。
私たちにできること – 持続可能な漁業のために
豊かな海からの恵みである水産物は、私たち人間の食卓に欠かせないものです。しかし、その恩恵を将来にわたって享受し続けるためには、水産資源を適切に管理し、乱獲を防ぐ必要があります。
私たち一人ひとりにできることは、資源管理された水産物を選んで購入することです。商品のラベルにMSC認証やASC認証などのマークがついているか、お店の人に聞いてみるのも良いでしょう。また、地産地消を心がけることも大切です。地元でとれた魚介類を選ぶことは、輸送にかかるエネルギー消費を抑え、環境負荷を減らすことにもつながります。
私たちが日々の生活の中で少し意識を変えるだけで、持続可能な漁業を応援し、未来の海を守ることができます。豊かな海を次世代へつなぐために、できることから始めてみましょう。