「カ」

地球環境を守るために

カリンB号事件:地球規模の責任を考える

1988年、ブラジルのゴイアニア市で発生したカリンB号事件は、放射性物質による世界最悪の被曝事故として、世界中に衝撃を与えました。 放射線治療に使用されていたセシウム137が、廃病院から盗難に遭い、スクラップとして売却されたことが発端でした。美しい青い光を放つセシウム137は、住民たちの間で好奇の目に晒され、宝石のように扱われ、結果として多くの人々が被曝しました。 この事件は、放射性物質の管理のずさんさ、そして環境問題に対する意識の低さを浮き彫りにし、国際社会に大きな教訓を残しました。
地球環境を守るために

イギリス環境法:環境庁による統合的な環境対策

イギリスは、産業革命以降、経済成長を遂げる一方で、深刻な環境問題にも直面してきました。大気汚染や水質汚濁、自然破壊など、経済活動が生み出す負の影響が顕在化し、国民の健康や生活環境を脅かすようになりました。こうした状況を受けて、イギリス政府は環境問題への取り組みを強化する必要性に迫られました。 1970年代に入ると、環境問題に対する国民の意識が高まり、環境保護を求める声が強まりました。政府はこれに応える形で、環境問題への包括的な対策を講じることを決意します。その中核となったのが、環境庁の設立と環境法の制定でした。環境法は、それまで個別に存在していた環境関連の法律を統合し、体系的かつ効率的な環境規制を実現することを目的としていました。
地球環境を守るために

深海の危機:海洋無酸素化

地球の表面の約7割を占める海。私たち人類を含め、多くの生命の源であるこの海で、今、深刻な異変が起きています。それは、「海洋無酸素化」と呼ばれる現象です。 海洋無酸素化とは、文字通り、海中の酸素量が減少していく現象を指します。 海水に酸素が溶け込む量は水温や塩分濃度など様々な要因に左右されますが、特に近年では、気候変動や環境汚染の影響が懸念されています。
地球環境を守るために

知っておきたい環境負荷の話

私たち人間が地球上で生活していく上で、少なからず環境に影響を与えています。この影響のことを、環境負荷といいます。具体的には、日常生活で出るゴミや、工場から排出される排気ガス、自動車の排気ガスなどが環境を汚染したり、資源を消費することで環境に負担をかけていることを指します。環境負荷は、地球温暖化や資源の枯渇、生態系への影響など、様々な環境問題を引き起こす原因となっています。
地球環境を守るために

地球を救え!環境コミュニケーションのススメ

近年、地球温暖化や気候変動、海洋プラスチック問題など、地球環境に関する深刻なニュースを耳にする機会が増えました。しかし、これらの問題を知ってはいても、具体的に何をすれば良いのか分からず、行動に移せていない人も多いのではないでしょうか? 環境問題の解決には、一人ひとりの意識を高め、持続可能な社会の実現に向けて共に歩むことが重要です。そして、そのために欠かせないのが「環境コミュニケーション」なのです。
地球環境を守るために

途上国の環境とエネルギー:課題と展望

多くの途上国は、経済発展と環境問題の板挟みという深刻なジレンマに直面しています。 経済成長を優先すると、どうしてもエネルギー消費が増加し、環境負荷が大きくなってしまう傾向にあります。工場の操業や自動車の排気ガスなどにより、大気汚染や水質汚濁が深刻化し、健康被害や生態系への悪影響も懸念されます。 一方で、環境保全に重点を置くと、経済活動が制限され、雇用やインフラ整備などが遅れ、貧困問題の解決を妨げる可能性も孕んでいます。 特に、先進国と比べて環境規制の整備や技術導入が遅れている途上国にとって、このジレンマはより深刻なものとなっています。 このような状況を打破するためには、環境と経済の両立を実現する持続可能な開発モデルの構築が不可欠です。
地球環境を守るために

海の健康診断表:地球環境を知る手がかり

広大な海は、地球環境において重要な役割を担っています。その海の状態を把握するために、様々な指標を用いて海の健康状態を診断する試みが行われています。これが、「海洋の健康診断表」と呼ばれるものです。 海洋の健康診断表は、水温や塩分濃度、海流、プランクトンの量、魚類の資源量など、多岐にわたる指標を総合的に分析することで作成されます。これは、人間の健康診断のように、海の現状を把握し、将来予測や環境保全に役立てるためです。 海洋の健康診断表は、地球温暖化による海水温の上昇や海洋酸性化、プラスチックごみによる海洋汚染など、様々な問題を私たちに突きつけています。この診断結果を真摯に受け止め、海の環境改善に向けた行動を起こしていくことが求められています。
再生可能エネルギー

エネルギー革命!仮想発電所の仕組みと未来

仮想発電所とは、その名の通り実在する発電所ではありません。太陽光発電や風力発電など、地域に点在する再生可能エネルギー発電設備や、電力会社と契約して電力の調整が可能な工場やオフィスビルなどを、あたかもひとつの発電所のように統合して制御するシステムのことを指します。まるで、巨大な発電所がそこにあるかのように、電力の供給をコントロールできるため、「仮想」発電所と呼ばれているのです。
地球環境を守るために

環境アセスメント制度: 地球を守るための制度

近年、地球温暖化や生物多様性の減少など、地球規模で環境問題が深刻化しています。 このような状況の中、開発による環境への影響を事前に評価し、環境保全と開発の両立を図るための制度として、環境アセスメント制度が大きな役割を担っています。 環境アセスメント制度とは、開発事業が環境に与える影響を事前に調査、予測、評価し、その結果を公表して国民や行政機関からの意見を聴取した上で、環境保全のための適切な措置を講じるための制度です。 簡単に言えば、開発事業が環境に悪影響を及ぼさないよう、事前に様々な角度から調査し、対策を検討するプロセスと言えるでしょう。
カーボンニュートラルに向けて

カーボンリサイクル:CO2を資源に変える未来

近年、地球温暖化の主な原因とされるCO2の排出量削減が世界的な課題となっています。その中で注目されているのが、CO2を資源として捉え、再利用する「カーボンリサイクル」です。 カーボンリサイクルとは、大気中や工場などから排出されたCO2を回収し、様々な技術を用いて燃料や素材、製品などに再利用する取り組みを指します。従来のCO2削減の考え方では、排出量を抑制することに重点が置かれていました。しかしカーボンリサイクルは、CO2を「厄介者」から「 valuable resource 」へと転換し、経済活動に循環させるという、全く新しいアプローチで地球温暖化対策に貢献します。 カーボンリサイクルには、大きく分けて以下の3つの種類があります。 1. -CO2を化学的に変換して、燃料や化学製品の原料を作る「ケミカルリサイクル」- 2. -CO2を藻類の光合成に利用し、バイオ燃料や化学製品の原料を作る「バイオリサイクル」- 3. -CO2を鉱物と反応させて、コンクリートなどの建築資材として利用する「ミネラルリサイクル」- これらの技術はまだ開発段階のものも多いですが、実用化に向けて世界中で研究開発が進められています。カーボンリサイクルは、地球温暖化を抑制するだけでなく、資源の有効活用や新たな産業の創出にも繋がる可能性を秘めています。未来に向けて、カーボンリサイクルは、持続可能な社会を実現するための重要な鍵となるでしょう。
地球環境を守るために

見えにくい負担:外部不経済と環境問題

私たちの経済活動は、しばしば意図せぬ影響を及ぼします。それは、市場取引の当事者以外に利益や損失をもたらすことがあります。これを「外部経済効果」と呼びます。例えば、工場の排水による河川の汚染は、周辺住民や漁業関係者に損害を与える外部経済効果の一例です。逆に、美しい庭園を持つ家の存在は、近隣の不動産価値を高める外部経済効果を生み出します。このように、外部経済効果はプラスとマイナスの両方の側面を持ちます。
地球温暖化について

地球の未来を守る!カーボンバジェット入門

近年、地球温暖化による気候変動が深刻化し、世界中で異常気象や自然災害を引き起こしています。この危機的な状況を食い止めるために、私たち人類が取り組むべき課題の一つが、「カーボンバジェット」の理解と実践です。 カーボンバジェットとは、地球全体の平均気温の上昇を、産業革命以前と比べて、1.5℃あるいは2℃に抑えるために、排出できる温室効果ガスの総量のことを指します。簡単に言うと、「地球温暖化を食い止めるために、あとどれだけ温室効果ガスを排出できるか」という、地球に残されたCO2排出枠と言えるでしょう。 産業革命以降、人類は経済発展のために、大量の化石燃料を消費し、CO2をはじめとする温室効果ガスを排出してきました。この温室効果ガスが地球温暖化の原因となり、気温上昇に歯止めがかからなくなっているのです。カーボンバジェットは、この深刻な状況を数値化し、私たち人類に残された猶予を示すことで、危機感を持って地球温暖化対策に取り組む必要性を訴えているのです。
地球環境を守るために

ドイツ環境影響評価法:持続可能な発展への道

ドイツは、環境保護の分野において先進的な取り組みを続けている国として知られています。 その一環として、1990年に導入されたのが環境影響評価法(Umweltverträglichkeitsprüfung; UVP)です。これは、大規模な開発計画が環境に与える影響を事前に評価し、環境への負荷を最小限に抑えることを目的とした法律です。 環境影響評価法が制定された背景には、高度経済成長に伴う環境問題の深刻化があります。 1970年代以降、大気汚染や水質汚濁、自然破壊などが社会問題化し、環境保護の重要性に対する意識が高まりました。環境影響評価法は、開発と環境保護の調和を図り、持続可能な社会を実現するための重要な法的枠組みとして位置づけられています。
ゼロエミッションに向けて

燃えるゴミ問題:地球環境への影響は?

私たちが普段何気なく捨てている燃えるゴミ。その多くは焼却処理され、私たちの生活から姿を消します。しかし、燃えるゴミを燃やすという行為は、地球温暖化を加速させる要因の一つとなっています。 燃えるゴミを焼却する過程で、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが発生します。 二酸化炭素は、地球の気温上昇に大きく関与することで知られており、その増加は異常気象や海面上昇など、地球全体に深刻な影響をもたらします。 さらに、燃えるゴミの中には、プラスチック製品も含まれています。プラスチックは、石油を原料としており、その燃焼によって大量の二酸化炭素が排出されます。 安易な廃棄は、限りある資源の枯渇にも繋がるため、私たちは燃えるゴミ問題を地球温暖化と資源の両面から捉える必要があります。 一人ひとりがゴミの分別を徹底し、焼却されるゴミの量を減らすことが、地球温暖化の抑制に繋がると言えるでしょう。
地球環境を守るために

知られざる水の消費量『仮想水』って?

私たちが普段口にする食べ物や、身につける衣服、使っている日用品など、あらゆる物の生産には、大量の水が使われています。例えば、牛肉1kgを生産するには約2万リットル、ジーンズ1本は約8,000リットルもの水が必要と言われています。この、商品を生産するために、間接的に使われている水の量のことを「仮想水」と呼びます。
地球環境を守るために

海の安全と環境を守る 海難残骸物除去条約とは?

海難事故によって発生する残骸物は、航海の安全を脅かすだけでなく、海洋環境にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。 沈没船や漂流するコンテナは、航行中の船舶にとって大きな危険です。特に、視界不良時や夜間には衝突の危険性が高まり、新たな海難事故を引き起こす可能性も孕んでいます。 また、残骸物から流出した油や化学物質は、海洋汚染を引き起こし、海洋生態系に深刻なダメージを与えます。これらの物質は、海洋生物の生息環境を破壊し、食物連鎖を通じて人間にも影響を与える可能性があります。 さらに、残骸物は、美しい海岸線の景観を損ない、観光業にも悪影響を及ぼす可能性があります。漂着した残骸物は、海岸の景観を損ない、観光客の減少や漁業への影響も懸念されます。 このように、海難残骸物は、海の安全と環境に対して多大な脅威をもたらす可能性があり、その影響は計り知れません。
地球環境を守るために

環境効率で未来を拓く:生産性との両立

「環境効率」という言葉は、近年ビジネスや経済の分野で頻繁に耳にするようになりました。これは、地球環境への負荷を減らしながら、経済活動を維持・発展させていこうという考え方を表す重要な概念です。しかし、「生産効率」という言葉と混同されがちであり、その違いを明確に理解することが大切です。 生産効率とは、投入した資源に対して、どれだけ多くの製品やサービスを生み出せるかという指標です。資源を節約し、短い時間で多くの成果を上げることを目指す考え方であり、企業の収益向上に直結するため、従来から重視されてきました。 一方、環境効率は、環境負荷も考慮に入れた上で、どれだけ効率的に価値を生み出せるかという指標です。単に投入資源の量を減らすだけでなく、環境負荷の少ない資源を選択したり、廃棄物や排出物を削減・再利用したりすることが求められます。 つまり、生産効率が「input」と「output」の関係性を重視するのに対し、環境効率は「input」・「output」に加えて「環境負荷」という要素を加えた、より包括的な視点で効率性を捉えていると言えるでしょう。
地球環境を守るために

「カルタヘナ議定書」: LMOと生物多様性

遺伝子組換え生物等(LMO Living Modified Organism)とは、遺伝子工学技術を用いて遺伝物質(DNAやRNA)を改変された生物のことを指します。具体的には、ある生物が持つ有用な遺伝子を、別の生物に組み込むことで、病害虫に強い農作物や、栄養価の高い食品などを作り出すことができます。 LMOは、従来の品種改良技術では実現が難しかった画期的な品種を生み出す可能性を秘めていますが、一方で、生態系への影響や、食品としての安全性など、様々な懸念も指摘されています。そのため、国際的には「カルタヘナ議定書」に基づき、LMOの国境を越える移動を規制するなど、その適切な利用に向けた取り組みが進められています。
地球環境を守るために

知られざる炭素の秘密:地球とエネルギーの未来

私たちの身の回りにある鉛筆の芯や、キラキラと輝くダイヤモンド。一見全く異なるこれらの物質だが、実はどちらも同じ元素「炭素」からできている。炭素は、生命の基となる有機物の主要な構成元素であり、地球上のあらゆる場所に存在している。 炭素は、結合の仕方によって、柔らかなグラファイトになったり、地球上で最も硬い物質であるダイヤモンドになったりと、全く異なる性質を持つ。この多様性が、炭素を化学の世界で最も興味深い元素の一つにしている。 しかし近年、この身近な元素である炭素が、地球規模の課題の中心となっている。大気中の二酸化炭素の増加による地球温暖化は、私たちの社会や経済に大きな影響を与える可能性がある。 本稿では、炭素の持つ多様な側面を探りながら、それがもたらす地球規模課題の解決策と、未来のエネルギーについて考えていきたい。
地球温暖化について

海面上昇の脅威:私たちにできること

地球温暖化は、私たちの生活に様々な影響を及ぼしますが、その中でも特に深刻なのが海面上昇です。ここでは、海面上昇のメカニズムと温暖化の関係について詳しく解説していきます。 海面上昇の主な原因は、地球温暖化による海水温の上昇と、陸上の氷河や氷床の融解です。 地球温暖化によって海水温が上昇すると、水の体積が膨張するため、海面が上昇します。これは、お風呂に熱いお湯を入れると水位が上がるのと同じ原理です。 さらに、地球温暖化の影響で、グリーンランドや南極大陸などの氷河や氷床が融解し、海に流れ込む水の量が増加しています。 氷河や氷床は、長い年月をかけて降り積もった雪が圧縮されてできた、巨大な氷の塊です。温暖化によってこれらの氷が融解することで、海水の量が増え、海面上昇を加速させています。
リサイクルについて

地球と財布に優しい?紙製容器包装の真実

紙製の容器包装は、一見環境に優しそうに見えますが、実際のリサイクル率はそれほど高くありません。その理由は、食品残渣やプラスチックコーティングなどの異物が混入しやすく、リサイクル工程で完全に取り除くことが難しいためです。例えば、紙コップの内側に施されたプラスチックコーティングは、リサイクルの妨げとなるだけでなく、焼却時に有害物質を発生させる可能性もあります。リサイクル率向上のためには、消費者の分別意識の向上はもちろんのこと、メーカーによるリサイクルしやすい素材の開発や、リサイクル工程の技術革新などが求められています。
地球環境を守るために

海を守る戦い:海洋汚染の深刻な現実

広大な海は、私たちに多くの恵みをもたらしています。美味しい海の幸は食卓を豊かに彩り、穏やかな波は心を癒してくれます。また、海は地球全体の気候を調整する役割も担っており、生命を育む上で欠かせない存在です。 しかし、このかけがえのない海は、今、深刻な危機に直面しています。プラスチックごみや工業排水など、人間の活動によって生み出された様々な汚染物質が、海の生態系を破壊し、私たちの生活にも暗い影を落とし始めています。
原子力エネルギー

核燃料サイクル:エネルギー問題の鍵となる仕組み

核燃料サイクルとは、ウラン資源を有効活用し、原子力発電を持続可能なエネルギー源とするための仕組みです。具体的には、ウランの採掘から始まり、燃料の加工、原子炉での発電、使用済み燃料の再処理、そして最終的な処分までの一連の流れを指します。 このサイクルによって、資源の有効利用と廃棄物量の削減を両立させることを目指しています。
地球環境を守るために

ホタルやタンポポが教えてくれる?環境指標種調査とは

私たちの身の回りには、たくさんの生き物が暮らしています。よく見かける生き物もいれば、滅多に見かけない生き物もいますよね。実は、こうした生き物の種類や数は、その場所の環境状態を反映していることがあるのです。 例えば、きれいな水辺にしか生息できないホタルや、栄養の少ない土地でも育つことのできるタンポポなど、生き物たちはそれぞれの好みの環境で生きています。そのため、ある場所にどんな生き物がどれくらいいるのかを調べることで、その場所の環境の良し悪しを推測することができるのです。 このような、環境の状態を知る手がかりとなる生き物を「環境指標種」と呼びます。環境指標種は、私たち人間にとって、身近な自然環境の変化を知るための大切なバロメーターと言えるでしょう。