改正アセス法:10年の成果と今後の展望

改正アセス法:10年の成果と今後の展望

地球環境を知りたい

先生、改正アセス法って、結局どんなことを目指した法律なのですか? 環境影響評価法と何が違うのか、よく分かりません。

地球環境研究家

なるほど。改正アセス法は、簡単に言うと、環境影響評価をもっと早い段階から、そして、より実質的に行おうとした法律なんだ。従来の環境影響評価法では、事業計画がある程度固まってから環境への影響を評価していたため、計画の変更が難しかったり、事業者と住民との間で意見の対立が生じやすかったりする問題があったんだよ。

地球環境を知りたい

なるほど。それで、早い段階での環境への配慮が必要になったのですね。具体的には、改正アセス法では、どんなことが変わったのですか?

地球環境研究家

大きく変わった点として、事業の計画段階で環境への配慮を検討する「戦略的環境アセスメント」が導入されたこと、そして、事業後の環境保全措置や調査結果を報告・公表する「報告書手続」が定められたことなどが挙げられるよ。これらの制度によって、環境問題への配慮がより一層強化されたと言えるね。

改正アセス法とは。

2011年4月に制定された「改正アセス法」は、正式名称を「地球環境とエネルギーに関する環境影響評価法」といい、環境影響評価法が完全に施行されてから10年の間に明らかになった様々な問題に対応するために作られました。

この改正法の最大のポイントは、事業の場所や規模などを検討する初期段階から環境への影響を考慮する「戦略的環境アセスメント(SEA)」を「配慮書手続き」として導入したことです。具体的には、事業者は、事業の場所や規模、施設の配置などを検討する際に、環境保全のために配慮すべき事項について検討し、その結果をまとめた「計画段階環境配慮書(配慮書)」を作成し、関係者から意見を聞く手続きが定められました。

また、事業者は、環境影響評価書を公表した後、工事中に実施した環境保全対策や事後調査の結果を、地域住民や地方自治体などが把握できるよう、それらの情報をまとめて報告・公表することが義務付けられました。これが「報告書手続き」です。

さらに、改正法では、これらの変更に加えて、補助金の対象となる事業の追加、環境影響評価の方法書についての説明会の開催、環境影響評価に関する書類のインターネット上での閲覧、環境大臣の意見提出機会の拡大なども盛り込まれました。

改正アセス法制定の背景と目的

改正アセス法制定の背景と目的

2011年の改正環境影響評価法(アセス法)制定以前は、大規模開発事業計画が環境に与える影響について、事業者による調査や予測が必ずしも十分に行われていなかったという指摘がありました。開発による自然破壊や環境汚染を懸念する声が高まり、事業計画段階から環境保全の観点を十分に組み込む必要性が認識されるようになりました。

このような背景から、改正アセス法は、環境影響評価の質の向上と手続きの透明化・迅速化を目的として制定されました。具体的には、事業者に対してより詳細な環境影響評価の実施を求めるとともに、住民や専門家、行政機関が意見交換を行う場を設けることで、多様な意見を反映したより良い開発計画の策定を目指しました。

戦略的環境アセスメント(SEA)導入の意義

戦略的環境アセスメント(SEA)導入の意義

2011年の改正アセス法において導入された戦略的環境アセスメント(SEA)は、従来の個別事業に対する環境影響評価(アセスメント)にとどまらず、政策や計画の段階から環境への配慮を組み込むことを目的としています。これは、環境問題の発生を未然に防止し、持続可能な社会の実現を目指す上で極めて重要な意義を持つものです。

SEA導入以前は、個別の開発事業に着手する段階になって初めて環境への影響が検討されることが多く、環境保全と開発との間で対立が生じやすい状況でした。しかしSEAの実施により、政策や計画の初期段階から環境的な観点を取り入れることで、より良い計画の策定や合意形成の促進などが期待されます。

具体的には、SEAを通じて、広範囲にわたる環境影響の予測や評価、環境保全目標の設定、代替案の検討などが行われ、その結果は政策決定や計画策定に反映されます。これにより、環境への負荷を低減するとともに、生物多様性の保全や地球温暖化対策にも貢献することができます。

SEA導入から10年以上が経過し、その効果や課題も明らかになってきました。今後は、経験の蓄積と制度の改善を通じて、SEAの有効性を高め、環境と開発の調和のとれた社会の実現を目指していく必要があります。

配慮書手続と計画段階での環境配慮

配慮書手続と計画段階での環境配慮

環境影響評価法(アセス法)は、大規模開発が環境に及ぼす影響を事前に予測・評価し、その結果に基づいて環境保全措置を講じることで、環境の保全と開発の調和を図ることを目的としています。2011年の改正アセス法の施行から10年が経過し、事業者による環境配慮の意識は高まり、計画段階から環境への配慮が図られるケースも増えています。

改正アセス法では、環境影響評価の実施が必要となる前の段階においても、事業者が自主的に環境への配慮を検討し、その結果をまとめた「配慮書」を作成・公表する手続きが導入されました。これは、事業の計画段階から環境への配慮を促し、より良い計画づくりにつなげることを目的としています。

配慮書手続では、事業者は、地域住民や専門家などから意見を聴取しながら、環境への影響を最小限に抑えるための方法を検討します。このプロセスを通じて、地域住民との合意形成を図りながら、環境保全と開発の調和のとれた事業計画の策定を目指します。

配慮書手続は、法的な拘束力がないものの、環境配慮の重要性を事業者に認識させ、計画段階での環境配慮を促進する効果が期待されています。今後も、配慮書手続の積極的な活用を通じて、より質の高い環境影響評価の実施と、環境と調和した持続可能な社会の実現を目指していく必要があります。

報告書手続による透明性確保

報告書手続による透明性確保

改正アセス法においては、事業者の説明責任をより強化し、環境影響評価手続きの透明性を高めるため、準備書、評価書に加えて「報告書」の手続が導入されました。この報告書は、事業の実施状況や環境保全措置の効果などについて、事業者が定期的に作成し、都道府県知事などに提出することが義務付けられています。提出された報告書は公表され、一般市民もその内容を確認することができます。

この制度により、事業者は環境保全への取り組み状況を継続的に開示し、説明責任を果たすことが求められます。また、地域住民や専門家にとっては、事業による環境への影響を長期的に監視し、必要に応じて意見を述べる機会が確保されることになります。

報告書手続は、改正アセス法の施行から10年が経過し、その運用実績も蓄積されてきました。今後は、過去の報告書の内容を分析し、環境影響評価の精度向上や、より実効性の高い環境保全措置の実施につなげていくことが重要です。例えば、報告書の内容に基づいて、環境保全措置の見直しや追加が必要となるケースも想定されます。さらには、報告書の情報公開をより一層進め、誰でも容易にアクセスできるよう、データベース化なども検討していく必要があるでしょう。

改正アセス法の課題と更なる改善に向けて

改正アセス法の課題と更なる改善に向けて

改正アセス法は、環境保全と開発事業の調和を目指し、2012年に施行されました。この10年間で、手続きの透明化や住民参加の促進など、一定の成果を上げてきました。しかし、なお残る課題も指摘されています。

まず、手続きの長期化が挙げられます。環境影響評価の範囲の拡大や、住民意見の反映に時間がかかるケースが増加しており、事業者の負担増となっているとの指摘があります。また、評価の実効性についても議論があります。環境影響評価の結果が、事業計画に十分に反映されていないケースや、モニタリングが不十分なケースも見られ、法の目的に沿った運用が求められています。

更なる改善に向けては、手続きの効率化実効性の向上の両立が重要となります。具体的には、IT技術を活用した情報公開の促進や、事業者と住民間の合意形成を図るための新たな仕組みづくりなどが考えられます。また、環境影響評価の専門人材の育成や、モニタリング体制の強化なども重要な課題です。

改正アセス法は、環境保全と開発事業のより良いバランスを実現するための重要な制度です。今後の10年に向け、その課題を克服し、より効果的な制度としていくための不断の努力が求められます。

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