生物多様性国家戦略2012-2020：日本の未来への道筋

生物多様性国家戦略2012-2020：日本の未来への道筋

生物多様性条約と国家戦略の必要性

豊かな自然に恵まれた日本は、古くから自然の恵みを享受し、独自の文化や生活様式を築いてきました。しかし、近年、人間活動の拡大や地球環境の変化により、生物多様性の損失が深刻化しています。生物多様性は、私たちの生活や経済を支える基盤となるものであり、その損失は食料安全保障、水資源、気候変動への対応など、様々な面で私たち人類の生存基盤を脅かすことにつながります。

このような背景から、生物多様性の保全と持続可能な利用を目的として、1992年に生物多様性条約が採択されました。日本もこの条約を締結し、国際社会と連携しながら生物多様性の保全に取り組んでいます。生物多様性国家戦略は、この条約に基づき、日本における生物多様性の保全と持続可能な利用に関する具体的な行動計画を示すものです。2012年から2020年までの期間を対象とした戦略では、生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せることを目指し、様々な政策が展開されました。

生物多様性国家戦略2012-2020の概要

「生物多様性国家戦略2012-2020」は、2010年に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議（COP10）において採択された「愛知目標」の達成に向け、日本が2012年から2020年までの期間に国内外で取り組むべき施策を具体的に定めた行動計画です。この戦略は、生物多様性の保全と持続可能な利用を通じて、自然と共生する社会の実現を目指しています。

本戦略では、「生物多様性の主流化」をキーワードに、あらゆる主体が積極的に生物多様性の保全と持続可能な利用に取り組む社会の実現を目指しています。具体的には、以下の５つの基本戦略を柱としています。

1. 生物多様性の保全と回復絶滅危惧種の保全や生態系を回復させるための取り組みを強化します。
2. 生物多様性の持続可能な利用自然資源を持続的に利用できるよう、管理や技術開発を進めます。
3. 生物多様性を脅かす要因への対策外来種対策や地球温暖化対策など、生物多様性を脅かす要因に対して取り組みます。
4. 生物多様性に関する知識の向上教育や普及啓発活動を通じて、国民の生物多様性への理解を深めます。
5. 国際連携の推進国際的な協力体制を強化し、地球規模の課題解決を目指します。

「生物多様性国家戦略2012-2020」は、日本の生物多様性を保全し、将来世代に引き継いでいくための重要な羅針盤と言えるでしょう。

地球環境問題への取り組み

地球温暖化や大気汚染、水資源の枯渇など、私たち人類は様々な地球環境問題に直面しています。これらの問題は、私たちの生活や経済活動が自然環境に大きな影響を与えていることを示しています。生物多様性の損失も、こうした地球環境問題と密接に関係しています。例えば、森林破壊は、生物多様性を低下させるだけでなく、気候変動を加速させる要因の一つとなっています。

生物多様性を保全し、その恵みを持続的に利用していくことは、地球環境問題の解決にも貢献します。豊かな生態系は、二酸化炭素を吸収・貯蔵し、気候変動を緩和する効果も持ち合わせています。また、健全な水循環を維持し、自然災害のリスクを軽減する役割も担っています。

生物多様性国家戦略2012-2020は、地球環境問題への取り組みを重視し、生物多様性の保全と持続可能な利用を通じて、将来世代に恵み豊かな地球環境を引き継ぐことを目指しています。

エネルギー問題への取り組み

生物多様性の保全と持続可能な利用は、エネルギー問題の解決にも深く関わっています。 自然エネルギーの利用拡大は、地球温暖化の防止に貢献すると同時に、生物多様性に配慮した開発を進める必要があります。例えば、太陽光発電施設の設置は、適切な場所を選定しないと、貴重な生態系を破壊する可能性があります。また、バイオ燃料の利用は、食料生産との競合や、森林破壊、生物多様性の損失などの問題を引き起こす可能性があります。

エネルギー問題への取り組みにおいて、生物多様性の保全と持続可能な利用を両立させるためには、以下の点が重要となります。

1. 自然エネルギーの導入に際しては、環境アセスメントを適切に実施し、生物多様性への影響を最小限に抑える必要があります。
2. バイオ燃料の利用は、持続可能な方法で生産されたものを選択し、食料生産や森林保全とのバランスを考慮する必要があります。
3. 省エネルギーの推進は、エネルギー消費量を削減することで、生物多様性への負荷を軽減することにつながます。

生物多様性国家戦略2012-2020では、これらの課題を踏まえ、エネルギー問題への取り組みにおいても生物多様性の保全と持続可能な利用を推進していくことを明確にしています。

持続可能な社会の実現に向けて

豊かな生物多様性は、私たちの暮らしと社会を支える基盤です。食料、水、木材、医薬品など、生物多様性から得られる恵みは、私たちの生活に欠かせないものばかりです。しかし、現在、人間活動の影響により、生物多様性の損失はかつてない速度で進行しています。

この深刻な状況を踏まえ、日本政府は「生物多様性国家戦略2012-2020」を策定しました。この戦略は、生物多様性の保全と持続可能な利用を推進し、自然と共生する社会を実現するための羅針盤となるものです。

持続可能な社会とは、将来世代にわたって、健全な環境、豊かな経済、そして安定した社会が実現されている状態です。生物多様性を保全し、その恩恵を持続的に享受していくことは、持続可能な社会の実現に不可欠な要素です。

この国家戦略では、「自然と共生する社会の基盤づくり」「生物多様性の主流化」「国際連携の推進」という3つの柱を軸に、具体的な行動計画が示されています。

政府、企業、国民一人ひとりが、それぞれの役割と責任を自覚し、連携して取り組むことで、生物多様性の損失を食い止め、未来への希望をつないでいくことができるのです。