生物多様性国家戦略2010:日本の未来への羅針盤
地球環境を知りたい
先生、「生物多様性国家戦略2010」って、どんな内容のものだったんですか?
地球環境研究家
いい質問ですね。「生物多様性国家戦略2010」は、2010年に日本の生物多様性を守るための方針を定めたものです。簡単に言うと、生物多様性を保全し、持続可能な形で利用していくための日本の行動計画と言えるでしょう。
地球環境を知りたい
行動計画というと、具体的にどんなことが書かれているんですか?
地球環境研究家
例えば、生物多様性の損失を止めるための目標や、そのために必要な対策などが細かく書かれています。2010年までに制定されていた生物多様性条約に基づいて作られ、日本の生物多様性保全の転換点になった重要な戦略なんですよ。
生物多様性国家戦略2010とは。
「生物多様性国家戦略2010」は、生物多様性の保全と持続可能な利用を目的とした日本の国家戦略です。これは、生物多様性条約第6条に基づき、日本の生物多様性に関する政策の方向性を示すもので、2010年3月に閣議決定されました。この戦略は、1995年10月に初めて策定された「生物多様性国家戦略」から数えて4回目の改訂版となります。2002年3月には「新・生物多様性国家戦略」、2007年11月には「第3次生物多様性国家戦略」と改訂を重ねてきました。また、「生物多様性国家戦略2010」は、2008年6月に施行された「生物多様性基本法」第11条に基づき、作成が義務付けられた初めての国家戦略でもあります。その後、2012年9月には「生物多様性国家戦略2012-2020」として再び改訂されました。
生物多様性条約と国家戦略の役割
私たち人類は、水や空気、食料など、様々な恩恵を自然から受けて生きています。この自然からの恵みは、生物多様性がもたらすものであり、私たちが未来も豊かに暮らしていく上で、生物多様性を保全していくことは非常に重要です。
1992年に採択された生物多様性条約は、まさにこの生物多様性の保全と持続可能な利用を目的とした、国際的な枠組みです。 この条約に基づき、各国はそれぞれの国情に合わせた生物多様性戦略を策定し、具体的な取り組みを進めることとなっています。
「生物多様性国家戦略2010」は、日本における生物多様性条約の具体的行動計画として位置づけられています。 この戦略は、生物多様性の重要性を国民全体で共有し、2050年までに「自然と共生する社会」を実現するという、長期的な目標を掲げています。
2010年版の特徴:4つの危機と対応
– 2010年版の特徴4つの危機と対応
2010年に策定された生物多様性国家戦略2010は、それ以前の戦略とは異なる視点と緊急性を持っています。この戦略は、地球温暖化や生物資源の過剰な利用など、4つの主要な危機を背景に、生物多様性の損失が人間社会にもたらす深刻な影響を認識しています。
具体的には、気候変動、生態系の劣化、侵略的外来種、過剰な利用という4つの危機が、生物多様性に深刻な脅威をもたらすと指摘されています。これらの危機に対して、戦略は、それぞれの危機への対策を強化するだけでなく、危機間の相互作用を考慮した総合的な対策を推進することを目指しています。
生物多様性国家戦略2010は、日本の未来を担保するための羅針盤としての役割を担っています。生物多様性の損失は、私たちの生活や経済活動に大きな影響を与える可能性があるため、この戦略に基づいて、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいく必要があります。
生物多様性の主流化:全てのセクターへの統合
生物多様性の保全は、もはや環境問題の枠を超え、経済、社会、文化など、あらゆる分野の持続可能性を支える基盤となっています。 このため、「生物多様性国家戦略2010」では、生物多様性の主流化を重要な柱として掲げています。
生物多様性の主流化とは、自然環境の保全を担う機関だけでなく、経済活動を行う企業、都市計画を進める行政、教育や研究を行う機関、そして日々の生活を送る私たち一人ひとりまで、全ての主体が生物多様性に配慮した行動をとることを意味します。
例えば、企業は、原材料の調達や生産活動において生物多様性に配慮し、その取り組みを積極的に開示することで、持続可能な社会の実現に貢献できます。また、都市部においても、公園や緑地をネットワークでつなぎ、生物の生息・生育空間を確保するなど、生物多様性を意識した街づくりが求められます。
生物多様性の主流化は、私たち人類の未来を左右する重要な課題です。それぞれの立場でできることから取り組み、生物多様性の恵みを受け継いでいくことが重要です。
里地里山保全:日本の伝統的な知恵を生かす
人と自然が長い年月をかけて築き上げてきた、日本の原風景ともいえる里地里山。その豊かな生態系は、私たちの生活に様々な恵みをもたらしてきました。しかし、近年の都市化やライフスタイルの変化に伴い、里地里山の利用は減少し、環境は悪化の一途をたどっています。生物多様性国家戦略2010では、この里地里山の重要性を再認識し、伝統的な知恵を生かした保全活動を推進しています。具体的には、地域住民による里山の管理や、間伐材を活用したバイオマスエネルギーの利用などが挙げられます。これらの取り組みを通して、生物多様性の保全と持続可能な社会の実現を目指しています。
2020年へ、そして未来へ:戦略のその先を見据えて
2010年に策定された生物多様性国家戦略2010は、生物多様性の損失を食い止め、自然と共生する社会の実現を目指すための羅針盤として、日本の進むべき方向を示しました。2020年という目標年限を迎え、私たちは多くの成果と教訓を得ることができました。しかし、生物多様性をめぐる状況は依然として厳しく、さらなる行動の加速と深化が求められています。
この10年間で、里地里山の保全や外来種対策など、様々な取り組みが進展しました。企業や市民の意識も高まり、生物多様性の保全は社会に広く浸透しつつあります。一方で、気候変動の影響が顕在化するなど、新たな課題も浮き彫りになっています。
2020年以降、私たちはこれまでの経験を踏まえ、次のステージへと歩みを進める必要があります。変化の兆しを的確に捉え、科学的知見に基づいたより効果的な対策を講じなければなりません。また、国際連携を強化し、地球規模の課題解決にも積極的に貢献していく必要があります。
未来に向けて、生物多様性の保全は、私たちの生存と繁栄に不可欠なものであるという認識を共有し、それぞれの立場から行動を起こしていくことが重要です。政府、企業、市民が一体となり、自然と共生する社会を創造していくために、力強く歩みを進めていきましょう。