「国連生物多様性の10年」:その成果と未来への教訓
地球環境を知りたい
先生、「国連生物多様性の10年」って、何だかよくわからないんですけど…
地球環境研究家
そうか。2011年から2020年までの10年間、世界中が協力して生物多様性を守ろうと決めたんだ。その期間を「国連生物多様性の10年」と呼んでいたんだよ。
地球環境を知りたい
へぇ~。具体的にどんなことをしていたんですか?
地球環境研究家
生物多様性の大切さについて、世界中で啓発活動が行われたり、それぞれの国で生物多様性を守るための計画を立てて、実行していたんだよ。日本も積極的に参加していたんだ。
国連生物多様性の10年とは。
「国連生物多様性の10年」とは、地球環境とエネルギー問題への取り組みとして、2011年から2020年までの10年間を生物多様性に注目する期間とすることを宣言したものです。この宣言は、2010年10月に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において日本政府から提案され、同年12月20日に開催された第65次国連総会において決議(決議65/161)として採択されました。
「国連生物多様性の10年」とは?
2011年から2020年までの10年間は、国連によって「国連生物多様性の10年」と定められていました。これは、生物多様性の損失を食い止め、生物多様性を保全し、回復軌道に乗せることを目的とした国際的な取り組みでした。世界各国が、生物多様性に関する条約(CBD)の目標達成に向けた行動計画を策定し、様々な活動を行いました。
COP10と日本の役割
2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、生物多様性の保全に向けた国際的な取り組みを大きく前進させました。日本はこの会議の議長国として、積極的な役割を果たし、「愛知目標」の採択に貢献しました。愛知目標は、2050年までに「自然と共生する世界」を実現するという共通のビジョンのもと、2020年までに達成すべき20の個別目標を設定し、各国が連携して生物多様性の損失を食い止めるための具体的な行動計画を提示しました。
COP10の成果は、愛知目標の採択だけにとどまりません。会議に合わせて開催された、生物多様性条約の枠組み以外での活動を行う団体が一堂に会する「生物多様性フェア」には、延べ約82万人が来場し、生物多様性に関する国民の意識向上に大きく貢献しました。また、日本政府はCOP10を契機に、「生物多様性国家戦略2010」を策定し、国内における生物多様性の保全と持続可能な利用に向けた取り組みを強化しました。
COP10は、日本が国際社会において、生物多様性の重要性を訴え、リーダーシップを発揮する重要な機会となりました。そして、COP10の成功は、その後の「国連生物多様性の10年」の取り組みを推進する原動力となりました。
10年間の成果と課題
2011年から2020年まで、国連は「国連生物多様性の10年」と銘打ち、生物多様性の損失を食い止めるための取り組みを世界的に推進しました。この10年間で、保護地域の設定や持続可能な漁業の実施など、一定の成果が見られました。例えば、陸と海の保護地域の面積は大きく増加し、絶滅危惧種の保全に向けた取り組みも前進しました。
しかし、生物多様性の損失を完全に食い止めるという目標の達成には至りませんでした。気候変動の影響の深刻化、森林破壊や海洋汚染の継続など、課題は山積しています。2020年以降も、2030年までに生物多様性を回復軌道に乗せるという新たな目標「ポスト2020生物多様性枠組」が採択され、取り組みは継続されています。
この10年間の経験は、生物多様性の損失が人間社会にもたらす深刻な影響を私たちに改めて認識させました。食料安全保障、水資源、気候変動への適応など、私たちの生活は生物多様性に支えられています。未来の世代に豊かな自然を残していくためにも、国際社会全体が協力し、生物多様性の保全と持続可能な利用に向けて、より一層の努力を重ねていく必要があります。
生物多様性とSDGsの密接な関係
生物多様性は、私たちが健康で文化的な生活を送る上で欠かせないものです。そしてそれは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも密接に関係しています。例えば、目標2「飢餓をゼロに」や目標3「すべての人に健康と福祉を」は、食料や医薬品など、生物多様性から得られる資源に大きく依存しています。また、目標13「気候変動に具体的な対策を」においても、森林や海洋などの生態系が気候を安定させる役割を担っており、生物多様性の保全は不可欠です。
「国連生物多様性の10年」では、生物多様性とSDGsの相互依存関係について広く認識が深まりました。これは、私たちが持続可能な社会を実現するためには、生物多様性の損失を食い止め、回復させていくことが不可欠であることを示しています。
しかし、課題も残されています。多くの企業や消費者は、まだ自らの活動と生物多様性とのつながりを十分に認識していません。今後、生物多様性の価値を経済活動に反映させ、持続可能な生産と消費のあり方を社会全体で考えていく必要があります。
2020年以降:私たちにできること
2011年から2020年まで、「国連生物多様性の10年」として、生物多様性の損失を食い止めるための取り組みが行われてきました。国際社会全体で目標達成には至らなかったものの、この10年間で生物多様性に関する意識は高まり、様々な保全活動や政策が進展しました。
2020年以降、私たちはこれらの成果を基盤に、より一層の行動を起こしていく必要があります。生物多様性は、私たちの生活や経済を支える基盤であり、その損失は、食料安全保障、水資源、気候変動への対応など、様々な面で深刻な影響をもたらします。
私たち一人ひとりが、日常生活の中で生物多様性を意識し、行動することが重要です。例えば、環境に配慮した製品を選ぶ、地元の食材を消費する、省エネルギーに努める、など、小さな行動の積み重ねが大きな変化を生み出します。
また、企業、政府、NGOなど、様々な主体が連携し、生物多様性の保全と持続可能な利用を推進していくことが不可欠です。企業は、サプライチェーン全体で環境負荷を低減し、生物多様性に配慮した事業活動を行う必要があります。政府は、効果的な政策や法整備、国際協力を通じて、生物多様性の保全を推進していく必要があります。NGOは、地域社会と連携し、現場での保全活動や啓発活動などを積極的に行っていく必要があります。
「国連生物多様性の10年」は終わりましたが、生物多様性の損失を食い止め、自然と共生する社会を実現するために、私たちの挑戦は続きます。未来への教訓を活かし、2030年までに生物多様性を回復の軌道に乗せるという新たな目標に向けて、共に歩みを進めていきましょう。