米国NEPAに見る環境アセスメントの夜明け

米国NEPAに見る環境アセスメントの夜明け

地球環境を知りたい

先生、地球環境とエネルギーの授業で出てきた『国家環境政策法【米国】』って、何ですか? なぜそんなに重要なんですか?

地球環境研究家

良い質問だね! 『国家環境政策法【米国】』は、1969年にアメリカでできた法律で、略してNEPAとも呼ばれるんだ。簡単に言うと、政府が何か大きなプロジェクトを行う前に、環境への影響をきちんと調査して、国民に公開しなさい!という法律なんだよ。

地球環境を知りたい

へえー、環境への影響を事前に調べるんですね。それは何のためですか?

地球環境研究家

環境問題を未然に防ぐためだよ。例えば、大きなダムを建設すると、周りの自然環境に大きな影響を与える可能性があるよね? NEPAは、そうした影響を事前に予測し、環境への悪影響を最小限にするために作られたんだ。世界で初めての本格的な環境アセスメント制度として、世界中の国々に影響を与えたんだよ。

国家環境政策法【米国】とは。

アメリカの『国家環境政策法(NEPA)』は、1969年に制定された世界初の環境アセスメント制度です。NEPAは、連邦政府が行う政策、計画、事業など、あらゆるレベルの活動に対して、環境アセスメントの実施を義務付けています。これにより、連邦政府の環境保全における役割と責任を明確化し、環境への影響を考慮した意思決定を促しています。

世界に先駆けた環境法、NEPAとは?

世界に先駆けた環境法、NEPAとは?

1960年代、米国では経済成長を背景に環境問題が深刻化していました。大気汚染や水質汚濁、野生生物の減少など、開発による負の側面が顕在化し、社会的な不安が高まっていきました。このような背景の中、1969年に制定されたのが国家環境政策法、通称NEPA(National Environmental Policy Act)です。これは世界で初めて環境アセスメントの概念を導入した画期的な法律として知られています。

1969年:米国でNEPAが成立した背景

1969年:米国でNEPAが成立した背景

1960年代、アメリカ合衆国では経済成長が加速し、大規模な開発事業が各地で進められていました。しかし、その一方で、深刻な環境汚染や自然破壊が社会問題として顕在化していきました。工場からの排水による河川の汚染、自動車の排気ガスによる大気汚染、農薬による生態系への影響など、開発による負の側面は、人々の健康や生活環境を脅かすまでになっていたのです。

こうした状況を受けて、環境問題に対する国民の意識が高まり、環境保護を求める声が大きくなっていきました。人々は、経済成長だけでなく、環境保全も両立させた社会の実現を求めるようになったのです。そして、1969年、そうした国民の声に応える形で、環境政策における画期的な法律となる「国家環境政策法(National Environmental Policy Act NEPA)」が制定されました。NEPAは、後の環境アセスメント制度の基礎となる法律であり、その後の世界における環境政策に大きな影響を与えることとなりました。

NEPAの目的と3つの柱

NEPAの目的と3つの柱

1969年に制定された米国国家環境政策法(NEPA)は、後の環境アセスメントの礎として世界的に重要な役割を果たしました。本法は、経済成長を重視してきた従来の政策決定プロセスを見直し、環境保全を国家目標の一つとして明確に位置付けた点で画期的でした。

NEPAは、1) 環境への配慮を連邦政府の意思決定プロセスに組み込むこと、2) 人間と環境の関係についての国民の理解を深めること、3) 環境問題に取り組むための国家的な枠組みを確立することを目的としています。これらの目的を達成するために、NEPAは「3つの柱」と呼ばれる以下の原則を打ち立てました。

* -情報公開- 環境に影響を与える可能性のある事業計画は、事前に環境影響評価書(EIS)として公開され、国民は自由に意見を述べることができます。
* -国民参加- 国民は、公聴会や意見書提出などを通して、環境影響評価のプロセスに積極的に関与することができます。
* -代替案検討- 事業計画については、環境への影響を最小限に抑えるための代替案を検討し、比較検討することが義務付けられています。

NEPAが環境アセスメントにもたらした影響

NEPAが環境アセスメントにもたらした影響

1969年に制定された米国国家環境政策法(NEPA)は、環境アセスメントの概念を世界で初めて法的に規定した画期的な法律として知られています。NEPAは、大規模な開発事業が環境に与える影響を事前に評価し、その結果を公表することで、環境保全と開発の両立を目指しました。

NEPAの制定は、環境アセスメントの実施を義務付け、環境問題に対する意識を高めました。開発事業者は、環境への影響を考慮した計画づくりが求められるようになり、環境NGOや市民は、アセスメント結果を根拠に意見を表明できるようになりました。

また、NEPAは「環境影響評価書(EIS)」の作成を義務付け、環境アセスメントの標準的な手続きを確立しました。EISは、事業内容、予想される環境影響、環境保全対策などを詳細に記載した文書であり、透明性と客観性を確保する役割を担っています。

NEPAは、その後の世界各国における環境アセスメント制度のモデルとなり、環境保全の法制化を大きく前進させる原動力となりました。日本でも、1997年に環境影響評価法が制定され、NEPAの考え方が導入されています。

日本の環境アセスメント法との比較

日本の環境アセスメント法との比較

– 日本の環境アセスメント法との比較

1969年に制定された米国のNEPA(国家環境政策法)は、環境アセスメントの法的枠組みを世界で初めて導入した画期的な法律として知られています。一方、日本では、それから遅れること12年、1981年に環境影響評価法(現環境アセスメント法)が制定されました。NEPAを先駆けとして世界的に環境アセスメントの制度化が進む中、日本もその流れに乗った形と言えるでしょう。

NEPAと日本の環境アセスメント法には、いくつかの共通点が見られます。例えば、両法とも、大規模な開発事業について、事前に環境への影響を調査・予測・評価し、その結果を公表すること、そして、その過程で国民の意見を聴取することを義務付けています。これは、環境問題に対する国民の関心の高まりを受け、開発による環境破壊を防ぎ、持続可能な社会の実現を目指すという共通の理念に基づいています。

しかし、両法には、制定の背景や制度設計の違いから、いくつかの相違点も存在します。例えば、NEPAは、環境への影響を回避・低減するための具体的な手段や対策を事業者に義務付けていないのに対し、日本の環境アセスメント法は、環境保全措置を事業者に義務付けている点が挙げられます。また、NEPAは、あらゆる連邦政府機関の活動に適用されるのに対し、日本の環境アセスメント法は、事業の種類や規模によって適用範囲が限定されています。

このように、NEPAと日本の環境アセスメント法には、共通点と同時に相違点も存在します。それぞれの国の歴史や社会状況を踏まえ、制度の改善を図っていくことが重要と言えるでしょう。

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