閣議アセスメント:日本の環境保護の歩み
地球環境を知りたい
先生、「閣議アセス」って、何ですか?環境問題と何か関係があるのですか?
地球環境研究家
良い質問ですね!「閣議アセス」は、1999年まで行われていた、国が行う大規模な事業が環境にどんな影響を与えるかを事前に調査する制度です。簡単に言うと、環境問題を防ぐための制度の一つと言えます。
地球環境を知りたい
なるほど。環境問題を防ぐために、国が大規模な事業の前に環境への影響を調べていたんですね。具体的にどんな事業が対象だったのですか?
地球環境研究家
ダムや空港、発電所など、私たちの生活に欠かせないものも多いですが、環境に大きな影響を与える可能性のある事業が対象でした。例えば、ダム建設による生態系への影響や、空港建設による騒音問題などが事前に調査されていました。
閣議アセスとは。
「閣議アセス」とは、地球環境やエネルギー問題に関連する国レベルの大規模事業に対して、環境への影響を事前に評価する仕組みのことです。1984年の閣議決定に基づき、環境アセスメントの要綱「環境影響評価の実施について」が作成され、環境アセスメントが開始されました。そして「環境影響評価法」が全面施行される1999年6月までの間、この閣議アセスに基づいて448件もの事業が環境アセスメントの対象となりました。
閣議アセスとは何か?
政府は、環境への影響が特に大きいと考えられる政策を決定する前には、事前にその影響について調査・予測・評価を行う必要があります。この手続きを環境アセスメントと呼びますが、特に政府全体の意思決定として行われるものを閣議アセスメントと言います。これは、環境基本法に基づいて実施され、持続可能な社会の実現のために重要な役割を担っています。
歴史的背景と目的
日本の環境保護の歴史は、高度経済成長期における深刻な公害問題を経て、大きな転換期を迎えました。大気汚染や水質汚濁といった深刻な環境問題は、人々の健康や生活に大きな影響を与え、環境保護の重要性が強く認識されるようになりました。
こうした背景から、環境に関する政策や法制度の整備が進められるようになり、環境アセスメント制度もその一環として導入されました。環境アセスメントは、開発事業などが環境に与える影響を事前に評価し、環境保全の観点から適切な対策を講じるための制度です。
閣議アセスメントは、特に国の政策や計画が環境に与える影響について、事前に評価を行うためのものです。これは、環境問題が個別具体的な開発事業だけでなく、社会経済活動全体に深く関わっているという認識に基づいています。閣議アセスメントを通じて、環境への影響を事前に把握し、環境保全と持続可能な社会の実現に向けてより良い政策決定を行うことが目的です。
具体的な評価項目とプロセス
閣議アセスメントとは、政府の重要政策が環境に与える影響を事前に評価するプロセスです。ここでは、日本の環境保護における閣議アセスメントの具体的な評価項目とプロセスを見ていきましょう。
まず評価項目ですが、大きく分けて「環境要素への影響」、「環境保全目標への影響」、「環境への負荷の程度」の3つの視点から多角的に検討されます。「環境要素への影響」では、大気、水、土壌、生物多様性など、様々な要素への影響が評価されます。 「環境保全目標への影響」では、地球温暖化対策や生物多様性保全など、国内外の環境目標への貢献もしくは阻害要因となるかが評価されます。そして「環境への負荷の程度」では、排出される温室効果ガスや廃棄物の量、自然環境の改変規模などが定量的に評価されます。
これらの評価項目に基づき、関係省庁から提出された資料をもとに、専門家による委員会で科学的な知見に基づいた審議が行われます。委員会では、必要に応じて追加調査や対策の見直しなどが求められることもあります。そして、最終的には閣議で審議・決定され、その結果は公表されます。このように、閣議アセスメントは透明性と客観性を確保しながら、環境への影響を最小限に抑えるための重要なプロセスとなっています。
閣議アセスの成果と課題
閣議アセスメントは、日本の環境保護における重要なプロセスへと成長し、政策決定における環境配慮を大きく前進させました。 特に、開発事業における環境への影響を事前に予測・評価することで、環境破壊の未然防止や持続可能な社会の実現に貢献してきた点は大きな成果と言えるでしょう。 また、環境アセスメント手続きの透明性や公衆参加の促進を通じて、国民の環境意識の高まりや、行政と国民との間の建設的な対話の促進にも寄与してきました。
しかしながら、閣議アセスメントは、依然としていくつかの課題を抱えています。例えば、アセスメントの実施期間が長期化する傾向や、評価項目や基準の明確化、専門性の高い人材の不足などが指摘されています。 また、温暖化対策など地球規模の環境問題への対応や、生物多様性の保全など、新たな課題も浮上しています。 これらの課題を克服し、環境保全と経済発展の両立を実現するために、アセスメント制度の継続的な改善、科学的知見の充実、関係機関や国民間の連携強化などが求められています。
環境影響評価法への移行とその後
1997年、環境影響評価法が成立し、環境アセスメントは大きな転換期を迎えました。従来の制度では、大規模開発が環境に与える影響を事前に評価する仕組みが十分ではありませんでした。環境影響評価法の施行により、事業者は環境への影響を予測・評価し、その結果を公表、説明する義務を負うことになりました。これは、環境保全の観点から事業計画を見直す機会を設け、環境への負荷を低減するための取り組みを促進することを目的としていました。
環境影響評価法の施行後、日本の環境アセスメントは、より厳格かつ透明性の高いものへと進化しました。しかし、手続きの複雑化や長期化、地域住民との合意形成の難しさなど、新たな課題も浮上してきました。これらの課題を克服し、環境保全と開発の調和を図るためには、更なる制度の改善や運用面での工夫が求められます。